目に砂

人生の人生

映画感想:ブラック・フォン

去年観そびれた映画「ブラック・フォン」がプライム会員特典になってたので観ました!犬が出てきますが元気です! ただし片方はおそらく劣悪な飼育環境のもとにあるものと推測され、ちょっと気になります。

ここ最近、巷を戦慄させている連続少年誘拐犯に拐われてしまったいじめられっ子の少年が、閉じ込められた部屋で鳴らないはずの電話が鳴るのを聞きました。彼に語りかけてきたその相手は一体誰で、なにを伝えようとしていたんでしょう? そして少年の運命は? といったあらすじです。結末はなんとなくわかると思うのですが、少し意外なところもあったので全部がぜんぶお決まりのパターンということでもありません。

「ハウンター」という映画があってこれがよかったのですが、本作にはこれに通じるものがあると思いました。つまり死者が生者にメッセージを届けてくれる話。ハウンターは少女たちの話で、こちらは少年たちの話。立ち向かいかたも違えば主人公の属性も違います。エンディングを迎えた時の心境はこちらのほうがすっきりしました。

少年たちの話といいつつ、主人公の妹も活躍を見せてくれます。彼女は時々夢でお告げを得ることがあります。兄妹の母親にも備わっていた力で、母親はこのことを苦にするようになって最終的に自らの命を絶ってしまいました。父親はそれを機にか酒に逃げ、兄妹に暴力を振るうようになってしまいました。特に母と同じ力を持つ妹には否定的です。支え合う兄妹は絆が強く、兄は妹を暴力から遠ざけようとし、妹は兄を傷つけるものに立ち向かおうとします。父親には「おまえの夢はただの夢だ、余計なことは言うな」と強く言われている(叩かれてもいる)妹ですが、いなくなった兄を助けたい一心で積極的にお告げを得ようとします。脱出しようとする兄と探そうとする妹がそれぞれ霊的なアプローチを得たり試みたりして、結末に近づいていくんですね。

映画公開時に読んだあらすじからは妹の活躍が多めの印象を受けており、女性主人公だったり女性の登場人物が活躍したりする作品を追って生きている私としては「あ、思いの外妹は出てこない」という印象があったかなかったかで言えばあります。しかしながら(犯人といじめっ子を除いた)人が人を思う気持ちとか、自分がたどり着けなかった場所に未来の人はたどり着いてほしいという切実な気持ちが満ちた作品だと感じたので、結果としては観てよかったと思います。

自分が得られなかったものを次のあなたは得られたらいいとかそういう気持ちってとても大事だと思っています。そういうふうに生きたいとも。自分が苦労したのだから他人も苦労してほしいとか、他人が楽をするのはずるいとか、そういう考えかたはよい未来をもたらしません。苦しみはより明るい未来への糧にしたいし、そこに自分がたどり着けなかったとしても無意味ではありません。

本作の死者たちは必ずしも善人や普通の人ばかりではなく、悪党に分類される人物も存在します。純粋に人を思う心からの行動ではなくても、よりよい未来へ進むために誰かにバトンを渡す、助けになるものを残していくという結果は変わりません。利己が利己のみにとどまらず、利己でありつつ利他であるのはかなり理想的だと私は思います。