目に砂

人生の人生

映画感想:デンデラ

アマプラで配信されてたんですね。サンキューTwitter! 数年前にTwitterで見かけて気になってたやつだ!

覚悟がガンギマリの老女たち(そうでない人もいる)のストーリーで、かっこいいでも片付けられないし不思議な気持ちになりました。

姥捨山をモチーフにしたであろう話で、70になった女性はお山に入って極楽浄土へ行く……雪深い山奥に捨てられる決まりの村で、主人公のカユがまさにお山に入る直前のところから物語が始まります。

カユは村の掟を受け入れており、先に親友が待っているはずの極楽浄土へ行けるよう手を合わせて祈っています。けれど極寒の山の中でそのようなことを続けられるはずもなく、ついに意識を失ってしまいます。待っていたとばかりにカラスたちが体を啄もうとする……のですが、運よくお山に入った女性たちによって作られた集落「デンデラ」に引き入れられたのです。

で、価値観を揺るがされる出来事を多数経験し、控えめだったカユはたくましく勇敢な性質を得るようになっていくわけです。その流れは抑圧からの解放というか、晩年の成長といった感じで好ましくもあります。

ただデンデラの生活は厳しいし、老女たちの置かれた立場がそもそも厳しい。襲いかかる困難も厳しい。デンデラの創設者やその存在に気づかず一年間自力で山を生き延びた女性、いくじなしと蔑まれようとも仲間の生存のために自らの信念を貫く女性など生命力と意志力に満ちたかっこいい老女は多数出てきます。捨てられたものたちの絆はじんわり沁みます。けれど人間の団結は自然の脅威のまえには時に無力で、それがやるせない。

舞台設定のために登場人物の口調は荒めで、なおかつ二人称代名詞がないのが新鮮でした。カユはデンデラの50人目の構成員です。つまりほかに50の登場人物がいるわけですが、互いに名前で呼び合っているため名前がわからないということがなくて便利でした。

女性たちの連帯が見られる作品は好きですし、本作も観てよかったと思いますが、次はもうちょっと爽やかな印象の作品を観たいです。